眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

ドーン・オブ・ザ・デッド 感想

夏のホラー映画まつり その5

現状では、ディレクターズカット版しか見られないのだろうか。劇場公開版と両方選択出来るようになってほしい。

DVDで何か映画でもみようかな、と思った時に、うちのライブラリーから選ばれる確率の高い一本である。めちゃくちゃ大好きな映画、というわけでもないのだが、恐怖、スリル、アクション、と娯楽要素がいい感じでブレンドされていて、今のところはまだ飽きてこない映画なのである。

しかしながら、何遍かみて、なんとなく気付くことがあったりするのが、映画をみていて面白いところなのだが、今回はマイケル・ケリー演じるCJについて。

最初に出て来たところでは、実に嫌な人物として描かれている。サラ・ポーリーたちに出て行けと偉そうに言い放ち、まるで自分がショッピングモールの王様であるかと勘違いしているようだ。だが、次第にそうでもないことが判って来るのだが、今回みていて思ったのは、彼はゲイではないのか、ということであった。

オリジナル版の出演者であるケン・フォーリーは、ここではテレビを通じて己の独自の観点から説教を垂れる伝道師。

「この世に地獄が溢れ出したのは、同性愛者のせいだ」というようなことを言うのである。テレビをみているのは、CJひとり。ただ絶望したような表情で、言葉もなく、その説教のテレビ画面をみつめている。追い詰められたような雰囲気が、このとき彼の表情や体の動きから確実に感じられる。また、教会のオルガン弾きがゲイであることを告白する場面でも、聞きたくないとばかりに、CJは耳をふさいでしまう。一見、おっさんがゲイになった話しなんて興味がないからのようだが、先の場面があるために、そこに自分自身の過去や現在を重ねてしまうのが怖いために、ごまかしているようにみえる。不必要なくらいにアップになるのも気になるところ。彼が徹底的に好戦的で、最後まで男の中の男として戦うのも、自分の性癖を隠すための虚勢だったのではないか。同時に、そこに彼の意地のようなものも感じられる。否定し続けた人生を、徹底的に叩いて、ぶっ潰してやる!というような。以前は、そんなふうには全く見ていなかったのだが…。何かの拍子に、違う見方があるのではと気付く、それが映画の醍醐味のひとつではなかろうか。

装甲車まがいに武装したバスで、ゾンビの群れの中を突き進むのは、本家ロメロの「ランド・オブ・ザ・デッド」(2005)よりも前。「ランド〜」はもっと本格的な軍のトラックだったように思うが、それよりも手作りで作り上げたこちらのバスの方がいかつく、かっこいいのは、どうしたことだろう。ポール・W・S・アンダーソンの「デス・レース」あたりに出て来ても違和感なく、あの映画の武装トラックにも勝てそうなくらいにかっこ良い。

言うまでもなくこの映画は「ゾンビ」のリメイクだが、ショッピングモールが舞台であること、黒人警官が主人公のひとりであること、妊娠している女性がいること、といった辺りが共通しているだけで、全くの別物。タイトルが欲しかった、という程度なのかもしれない。特に、オリジナルのクライマックスである、暴走族との対決を一切無視したドラマにした英断には拍手したいくらい。

いやーそれにしても、冒頭の10分間は、本当に凄い。緊迫感が尋常ではない。そういやノベライズ本を持っていた。ちゃんと読んでみよう。